犀のように歩め

自分の角を道標とする犀のように自分自身に対して灯火となれ。鶴見俊輔さんに教えられた言葉です。

2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ツユクサの花

お茶の席に、ツユクサの花が活けてありました。引っ越す前の自宅の庭には、この時期、毎朝見かけていた懐かしい花でもあります。ツユクサは、つぼみを包むように葉が変化した「苞葉(ほうよう)」という器官の中にたくさんの花を仕込んでいて、今日萎んだ花…

鎮守の森で

遠くに赴任した次女がこの週末帰ってきました。長女と一緒に迎える誕生日を、家族でお祝いするためです。生まれてこの方、ずっと同じ日に同じ歳を祝う双子姉妹の特別な日なので、我が家の行事としても、欠かすわけにはいきません。 親としても、双子の娘たち…

桂籠の花入

先日、妻が裏千家準教授の免状をいただきに、師匠を訪ねて行きました。私よりずっと茶歴が長いにもかかわらず、前の師匠のご病気もあって免状までの道のりが遠かった妻は、7年前に私の師匠のもとに入門しました。それ以来、順調に奥伝引継、お茶名拝受、準…

鳳仙花の赤

近くの公園の花壇に、鳳仙花の赤い花が咲いています。白い花ばかりに注目していましたが、梅雨曇りのなか、こういう鮮やかな赤を見ると、改めて新しい季節が始まるのだと思います。 花の時期が終わり、種子が熟したころ、ぱちんと弾けて種子を飛ばすことでも…

ナツツバキの花

茶道の稽古場にナツツバキの花が活けられていました。白く透けるような花弁の先端が波打っていて、いまにも崩れそうな儚さを漂わせています。朝咲いて、夕方には花ごと落ちてしまうので、なおさら、一瞬の華やかさに滅びの色がにじんでいるようです。ナツツ…

仙厓さんの「◯△⬜︎」再考

仙厓さんの遺偈のことを書いたこともあって、仙厓さんの遺した絵や書の図録を見直してみました。最も難解とされる「○△□」は、前に見た印象と異なるだろうか、という期待もあります。玄侑宗久さんは、この図について次のように述べています。"一円相という型…

仙厓さんの遺偈を読み直す

博多の禅僧仙厓さんは、私の大好きな人で、その臨終の話は有名です。いくつかのバリエーションがあるのですが、ここでは玄侑宗久さんの『やがて死ぬけしき』に記されているところに従います。病の床に臥せっており、その最期を見送らんと多くの弟子たちが枕…

生きることへの慎ましさ

永田和宏著『人生後半にこそ読みたい秀歌』にも挽歌が取り上げられています。挽歌の中でも、読む者の心を締め付けるのは、子の死を迎えた親の歌ではないでしょうか。次の歌は、本書のなかで数首挙げられている中の一首です。 笑ふより外はえ知らぬをさな子の…

無人駅の花

永田和宏の近著『人生後半にこそ読みたい秀歌』を読んでいます。 人生百年と言われて久しいですが、老化を病と捉え、うまく治療することで、健康寿命もまだまだ延ばしていくことが可能だ、という研究もあるのだそうです。 こうやってヒトにのみ与えられた生…

咲き登る花

近くの公園の花壇にジギタリスが植えられており、下のほうから花がつき始めていました。 この花の咲き方を「無限花序」と呼ぶのだそうです。 天に向かって、無限に咲き進んでいくかのような、勢いを感じさせる言葉です。立葵やルピナスもまた、下から順に花…

どくだみの花

稽古場に、どくだみの花が活けられていました。庭に大繁殖するうえ、刈ると独特の匂いがするので、茶花として敬遠することもありますが、こうやって一輪、籠から顔を覗かせている姿は、健気で可憐です。花の中心部にある黄色い突起物は、雄しべや雌しべでは…

情緒というもの

数学者の森田真生が、著書『偶然の散歩』のなかで、数学者、岡潔の論じる「情緒」というものについて語っています。生きた表現のあり方について考えさせられます。人は限られた身体を通じて、それぞれの場所に向き合います。そこには、個々の身体の限界を超…

なくしてはならないもの

学生としてワシントンD.C.にいたとき、ペンタゴン(国防総省)の財務担当の将校さんに、とてもお世話になりました。クリスマス休暇となれば、日本人留学生を連れて、ウェストバージニアのスキー場まで連れて行ってくれたり、外国人の生活に困ったことがない…

出口のないトンネル

再び鹿児島への出張です。今日の会合でとりあえず、一連の仕事はひと段落します。当然のことながら、今度の新幹線の旅も何度もトンネルを抜けるので、前に書いた「内」や「外」のことについても考えてしまいます。なんとかのひとつ覚えのようだとは思うので…

生きた証に

仕事の会合が終わって懇親会の席で、私の父のことが話題に出ました。何年前に亡くなったんでしたっけと聞かれて、8年ほど前になります、と答えた瞬間に重要なことに気がつきました。 その日は、ちょうど父の誕生日で、大正14年生まれの父は、昭和と同じ歳…