犀のように歩め

自分の角を道標とする犀のように自分自身に対して灯火となれ。鶴見俊輔さんに教えられた言葉です。

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

茶室のなかの永遠

先日開催された秋季茶会で、わが社中は濃茶席を担当しました。大濠公園の濃茶席でお茶をいただく機会は何度かありましたが、茶室の裏方を見るのは初めてでした、茶室の奥に水屋があり、その奥には三畳ほどの小さな茶室も控えています。水屋の隣は、にじり口…

調音のための作法

森田真生の『偶然の散歩』(ミシマ社)に、環境哲学者ティモシ―・モートンの「世界の終わり」という言葉が紹介されていて、暫く考えさせられました。それは、終末論的な終わりのことではなく、自分の内と外とを切り分けて、自分だけが安全に引きこもれるよう…

ひとを懐かしむこと

大濠公園で開催される秋季茶会で、今年はわが社中が濃茶席を受け持つことになり、その準備に追われています。 数年前、はじめて大寄せの茶席で薄茶点前を任されたときには、相当に緊張しました。建水を持って立ち上がった瞬間、軽く足がつって肩の力が抜けた…

「後ろ姿」と「貧の心」

畳のうえに風炉を置いたお茶の点前は10月で最後になります。11月の炉開きに向けて、より侘びた道具が好まれるようになって行きます。寒さを感じ始める客のために、これまで客から遠い位置に置かれていた「風炉」が、やや客よりに置かれる「中置」という点前…

『草枕』のそれから

「智に働けば角が立つ、情に棹させば流される」で始まる夏目漱石の『草枕』は漢語の多い、韜晦趣味とも言われて敬遠される作品ですが、じつは漱石のサービス精神に溢れた、立派なエンターテイメント作品だと思います。 たとえば湯治場の娘「那美」と主人公が…