2014-01-01から1年間の記事一覧
マックス・ヴェーバーは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で、カルヴァン派の予定説と資本主義との密接な関係を述べています。誰が救われるかは、神によって予め定められており、お祈りをしたり悔い改めたり、といった「行動」によっては救済…
何かの拍子に思い出しては、しばらく頭の中に渦を巻いて占領してしまうような話があります。中島敦の小説「名人伝」は、そのなかのひとつです。 中国の邯鄲の都に紀昌という若者がおり、天下一の弓の名人になろうとしました。師に付いて「瞬き」をしない訓練…
宮澤賢治の詩「アメニモマケズ」の六行目に「決シテ瞋ラズ」があります。一生のうちに何度も触れる詩ですから、ルビが振られていなくとも、前後の流れで「いからず」と読めます。 これが仏教において三毒と呼ばれる「貧・瞋・痴」すなわち「貪(むさぼ)る、怒…
仙厓和尚入滅の際、その枕頭には檀家総代の黒田藩家老 久野外記の姿がありました。 彼もまた「死にとうない」の最期の言葉を耳にしたことでしょう。 外記がどのような気持ちでその最期を看取ったのか記録にはありませんが、大きく心に響くものがあったと思わ…
越後の良寛和尚には山田杜皐(とこう)という与板に住む俳人の親友がいました。良寛は与板へ行けば、造り酒屋でもあった杜皐の家に泊まり、大好きな酒を心ゆくまで飲み語り合ったといいます。 良寛が最晩年の折、三条市を中心に大地震が起こります。良寛の住ん…
心理学者の河合隼雄さんが小説家の小川洋子さんとの対談で、小川さんの作品『博士の愛した数式』をめぐって次のように語っています。「魂」について語る河合さんは、小説の中のあの博士のように温かです。 河合 線分の話もいいですね。 小川 「真実の直線は…
「顔」は突然に私の前に現れて、どのような理屈もその顔の出現に先回りすることはできない、なぜなら、その顔に不意に呼び止められるときから、倫理的な感覚は発動し始めるからだ、そのように前回述べました。 その「顔」とは、何故、何を我々に強いるのでし…